トップ  >  NHKの受信料を一時停止(保留)できる法的見解

NHKの受信料を一時停止(保留)できる法的見解

 NHKの受信料を一時停止(保留)できる法的見解(2014/4/28)

 

はじめに

 

 私達は33日会長の辞任要求と辞任しない場合は受信料の一時停止(保留)宣言をし、その文書をNHKに送った。

>>籾井勝人NHK会長に対する「辞任要求書」

 

 その後、籾井会長が辞任する気配がないのでメンバーは順次受信料を一時停止(保留)しつつある。

 そして本日(428)NHKの受信料を一時停止する法的見解を公表する。なお、今後多くの弁護士、研究者、ジャーナリスト、市民の意見を取り入れより良い見解に仕上げる予定である。

 

1 受信料支払契約の法的性質

 

(1)受信料は税金ではない

 放送法64条1項は「テレビを設置した者はNHKとその放送の受信について契約を締結しなければならない」と定めている。「テレビを設置した者はNHKに受信料を支払わねばならない」とは規定していない。放送法は「受信契約」の締結を義務付けているが、税金・社会保険料などのように法律で受信料の徴収権をNHKに付与していない点でそれらと異なる。テレビを設置しただけで受信料を直ちに支払う義務が生じるとする見解はない。

 第1次安倍内閣時代に放送法を改正し、受信料の支払義務化の放送法の改正に動きがあったが、社会の反発もあり受信料の義務化法案は頓挫した。第2次安倍内閣が籾井、百田、長谷川などの人事でNHKを完全に牛耳ることができればNHKの受信料の義務化が登場するであろう。

 

(2)受信料の法的性格

(ア)対価性のない特殊な負担金説

①  昭和39年9月の臨時放送関係法制調査会の答申は「受信料は特殊な負担金説」と説明した。それがその後の政府の見解になっている(「調査と情報」591号の「NHK受信料問題」2ページ参照)

>>「調査と情報」591号「NHK受信料問題」

②  2010年6月29日東京高裁判決もほぼ同様の見解である。この「受信料」は,国家機関ではないNHKという特殊法人に徴収権を認めた特殊な負担金というべきものであり,当該放送受信料の支払義務を発生させるための法技術としてテレビの設置者とNHKとの放送受信契約の締結強制という手法を採用したものと解される。NHKが「豊かで良い放送を行う義務」を課せられているが,NHKは,個々の契約者との間において,放送受信料の支払義務と対価的な双務関係に立つものではなく,国民に対して一般的抽象的に負担する義務と解するのが相当である。(2010年6月29日東京高裁判決、判例時報2104号40頁)

 

(イ)対価性のある契約上の債務説。〈2012年2月29日東京高裁判決〉

NHKは債権の法的性質の特殊性(対価性のない特殊な負担金)を主張するが・・・・・・・、受信料債権は、現行法上、私人間の契約に基づく債権と構成されており、特殊公法的権利として立法されているわけではないから(民事訴訟手続に基づき権利を実現することを要し、滞納処分のような特別の制度は設けられていない。)、その法的・客観的根拠を欠くというほかはない。また、受信料とは文字どおり受信(視聴可能性)の対価であり、受信と受信料に対価性があることは明白である。NHKの主張は、契約上の対価性を理解せず、受信概念を視聴概念にすり替えた上、対価性は現実の視聴との間にのみ生ずるとの独自の主張をするものにすぎない」(2012年2月29日東京高裁判決、判例時報2143号89頁)

(ウ)私達の見解

受信料支払い義務はNHKが放送法に定める放送を受信者に提供することの契約上の対価として発生すると解した方が、法64条1項が「契約」とあえて「契約の締結義務」を規定している趣旨に合致すると考える。政府見解のような対価性のない負担行為を国民に強制することは、「契約」概念と矛盾するからである。とりわけNHKだけに受信者に対して特別契約締結義務権限を法律で付与したのは、NHKが公共放送を為す放送機関であるが故に認められたのであることから、「対価性」がある契約行為と解する方が放送法の趣旨にも合致する。NHKが多くの受信者が支えていると言う国民の意思にも合致する。

2 NHKと受信者の契約内容にNHKが放送法を順守する義務があるかどうか

(1)NHKが公共放送でなくなれば受信料を払う必要がない

前記(ア)の判決によると、受信料は「特殊な一方的な負担金」で「受信との対価関係がない」という見解となることから、受信料はほぼ税金と同じ法的性質を有することになる。NHKがどのような放送をしようとテレビ設置者はただ、黙って受信料を支払う義務があるかのごとき見解に近くなる。ただこの判決でも、放送法64条に受信料の発生原因が法律ではなく「契約」の締結義務と規定していることから見て、NHKとの「特殊な負担金」を支払う「契約」と解さざるを得ない。この「特殊な負担金」説であっても、NHKが公共放送ではなく政府放送機関になり下がった場合にまで、国民に負担を強制できるかどうかは別問題になろう。何故なら、このような「特殊な負担金」をテレビ設置者に払わせる根拠は、NHKが公共放送であるが故に放送法が特殊認めた「徴収権」であって、NHKが公共放送機関で無くなった場合にまで国民に受信料を支払いさせる趣旨ではないからである。

 

(2)NHKは放送法を順守する義務がある

① 放送法はNHKを含む放送事業者に放送法の順守を要求している。

その違反者には業務停止命令もできる規定になっている(放送法174条)。

「この法律」には放送法4条の番組準則の順守も含まれると解説されてい る〈放送法逐条解説〈改訂版〉金澤薫著440頁〉

 

② NHKの放送法第4条の順守は、国に対しての義務だけではなく、NHK 受信契約者との関係においてもその義務があると解すべきである。

上記(イ)の判決によると受信料は「受信料とは文字どおり受信(視聴可能性)の対価であり、受信と受信料に対価性があることは明白である」と言われるように、受信料はNHKの放送を受信することと対価関係に立つことを明言している。

このような場合にNHKと受信者との契約は、NHKが放送法を順守し て放送することが当然の前提に立つものであり、放送法の内容が当事者間の契約内容になっていると解される(このような当事者間の契約が、それを規律する法令がある場合にその法令が当事者間の契約内容となっていることを言い、例えて言えば、市営住宅の賃貸借はそれを規律する公営住宅法などがまず当事者の契約に適用され、公営住宅法の規制のない場合には、民法の賃貸借規定や当事者間の契約自由の原則が適用されると同じ関係に立つことを言う)。

NHKが放送法4条に定める国内放送などにおいてこれを順守することが、NHKと受信者の契約内容になっていると解され、受信料はその対価として支払う継続的有償双務契約になると考えられる。特に放送法4条違反などは公共放送の根幹部分であるから、この違反などについて、受信者は継続的供給契約の性質上、契約上の何らかの「異議」権が行使できると解すべきであろう。

(放送法)

第4条 放送事業者は、国内放送及び内外放送(以下「国内放送等」という。)の放送番組の編集にあたつては、次の各号の定めるところによらなければならない。

一 公安及び善良な風俗を害しないこと。

二 政治的に公平であること。

三 報道は事実をまげないですること。

四 意見が対立している問題については、できるだけ多くの角度から論点を明らかにすること。

 

3 受信料の一時停止、保留権の行使が認められるか

(1)継続的供給契約において相手方が契約違反すればその支払いを一時停止・保留できるのが原則

私法上の継続的供給契約において、一方が契約に定めた内容の債務を履行しない場合、又はその履行しない危険性がある場合には、契約の相手方に対してその履行を求め、自らの負う債務の履行を一時保留又は停止することができる。過去の判例で、取引先に信用不安があるときにその不安解消策を求め、それ相当の手段を講じない場合には材料の供給や支払いを一時保留、停止することが判例でも認められている。民法の同時履行の坑弁権であるとか不安の抗弁権とも言われている。

「継続的取引契約により,当事者の一方が先行義務を負担し,他方が後履行義務を負担する関係にある場合に,契約成立後,後履行義務者による後履行義務の履行が危殆化をもたらした事由を解消すべき事由のない限り,先履行義務者が履行期に履行を拒絶したとしても違法性はないものとすることが,取引上の信義則及び契約当事者間の公平に合致するものと解されるとした事例」(平成19年4月5日知的財産高等裁判所判決)

また、私法上の取引契約において、供給者側が契約内容に応じた役務・商品を提供せずに瑕疵ある役務・商品を継続的に提供する場合に、購入者側は瑕疵のない役務・商品の給付を求め、支払いを保留することができる。

不完全な役務・商品の提供の場合(民法上不完全履行と呼ばれている)も同様である。

 

(2)NHKの受信料支払契約でも受信料の一時停止(又は保留)は認められる

NHKと視聴者との間の契約が、NHKが継続的に放送法に従った放送を為す義務を視聴者に対しても負っており、受信者がこの対価として受信料を支払う有償双務契約であると解する以上、NHKが公共放送機関でなくなった場合は勿論、NHKに公共放送をなすべき体制がなくなったとか、その疑いが濃厚な場合には受信料の一時停止(又は保留)することは認められるべきであろう。

  比喩的に説明すると「国産牛肉」=公共放送を継続的に買い続けていたが、ある段階から「産地不明の肉」=政府の御用放送が混ざっていたようなケースを想定すれば容易にこの論理の正しさが判る。

 「国産牛肉」の提供を求め、何故「産地不明の肉」が混ざっているのか、その会社のガバナンスやコンプライアンスが機能するまで牛肉代の支払を一時停止(保留)するのと同じ論理である。

(3)籾井会長の発言でNHKは公共放送機関ではなくなった

籾井会長の「政府が右を向けという時にNHKが左を向くことができない」とか「秘密保護法が通過してしまった以上、あれこれ言えない」などの発言は、上記放送法4条の「政治的に公平であること」とも矛盾し、「意見が対立している問題についてはできるだけ多くの角度から論点を明らかにすること」とも完全に矛盾する。

放送法51条1項「会長はNHKを代表し、経営委員会の定めるところに従いその業務を総理する」と定めている。「代表するとは会長の行為がそのままNHKの行為として法律上の効果が発生する」「NHKの会長は『NHKの業務を統括し管理する権限』を放送法において権限を付与されている」と説明されている。(放送法逐条解説〈改訂版〉金澤薫著159頁)。

もし会長がこのような考えに基づきNHKの放送を為すことになればこれは公共放送でなく、安倍政権放送機関になることを意味する。

 

(4)籾井会長発言は口先だけで撤回。謝罪しているが本当は反省していない

籾井会長はNHK会長の就任の公式記者会見で話した以上、「個人的見解」などとして責任逃れが許されるものではない。特に「最終的には会長が決める。その了解なしに現場で勝手に編集したときは責任を問う」旨の発言や、理事全員に日付白紙の辞職届を提出させた行為などは、NHKの役職員への圧力となる危険性を有している。そのような発言が撤回、謝罪され、個人的見解を放送現場に指示しない等と弁明したとしても、国民は口先だけの謝罪、弁明としか思っていない。その後の経営委員会(多くの国民に監視されていない現場)で「何か悪いことを言いましたか」などと全く反省していない姿勢を示していることからも明らかである。

理事全員から日付白紙辞職届を受取り、こっそり返還する等、公共放送機関の会長としてふさわしくない乱暴で粗野な体質・隠蔽体質が明らかになった以上、公共放送機関のトップとして失格である。

 

(5)現場への指示がなくても幹部・職員は会長の意向を忖度して放送する

仮にそれらの発言が撤回され、又会長が放送現場に指示しないと幾ら「宣言」しても、巨大な権限を持つ会長の真意、姿勢、意向が一旦明らかになった以上、現場の職員達が委縮し又は会長の意向を忖度して現実の放送に影響を与える危険性が大である。

かつて安倍、亡中川議員らがNHKの従軍慰安婦番組に関してNHKに介入したことがあった。この時、東京高裁判決は、NHKの幹部達が安倍議員達の意向を忖度して番組を改ざんしたと認定した。NHKの弱点を見事に表現した。

 

(6)NHKのニュース番組は既に安倍政権の意向を忖度して放送している

「放送を語る会」は秘密保護法に関してのNHKのニュース番組を点検して次の通り批判している。

http://www.geocities.jp/hoso_katarukai/140306himitu_monita.html

「ニュースウォッチ9」も、政権寄りの報道に終始し、「客観報道を装った政府広報紙TV版」、「政府のスポークスマン的役割」などの厳しい批判を視聴者から突きつけられた。 

特に、二つのニュースに共通していたのは、秘密保護法に対するメディアとしての危機感のなさである。法案はメディアの取材・報道の自由を大きく制約する危険を孕んでおり、テレビの現役キャスターを含め多くのジャーナリストが反対を表明し、抗議に立ち上がったにもかかわらず、NHKの二つのニュースからはその危機感が全く感じられなかった。

コメントは政府説明丸写し、批判的視点抜きの法案解説

「NHKニュース7」は10月15日から12月11日までの間、計26回にわたって法案関連のニュースを伝えたが、法案の中身についての説明、解説は政府関係者の発言や資料に基づいた発表ものがほとんどで、キャスターがフリップなどを使って政府側の説明を逐一補強するという念の入れ方だった。
 
中でも12月9日、臨時国会閉会を受けての安倍首相会見のニュースでは、法律の施行によって「秘密の範囲が際限なく広がることはない」「国民の通常の生活が脅かされることはない」などのフレーズを会見の音声とキャスターコメントで4、5回も繰り返す異常な伝え方だった。
 「ニュースウォッチ9」
も、10月17日の法の目的や条文解説は、政府説明をなぞってそのままコメントした。
 25日も法案解説は政府説明丸写しに加えて、法案の必要性を首相・外相・防衛相の3人がかりのコメントで強調した。視聴者には政府広報のように感じられる構成だった。
 12月5日は 参議院国家安全保障特別委で強行採決された法案解説でも、相変わらず政府説明のオウム返し。これだけ反対の声が高まり、法案への厳しい批判が展開されているにもかかわらず、それには一切触れず政府の趣旨説明どおりの解説は、政府寄りの報道姿勢を改めて浮き彫りにした。

 

(7)会長の辞任でしか国民の信頼は回復されない。NHKの本来の姿に戻す役割は受信者の権利であり責務である。

 籾井会長が個人的意見とか、撤回した、放送内容に介入しないとか弁明 しても、籾井会長が居座ることが公共放送機関のトップとして失格であり、一度失った国民のとの信頼は口先だけの弁明ではその信頼は回復されない。

 このような放送法が予定していない異常事態になった以上、NHKが放 送法に従った放送をなさない危険性があり、その是正を求め、受信料を一時停止、保留する権利があると解するべきであり、それが公共放送機関であるNHKを本来の姿に戻す受信者の権利であり責務であると考える。

 

(8)どちらが正当か司法の場で最終解決

NHKが放送法を順守する放送をしていないかどうか、その危険性があるかどうか、又その危険性の程度に関して、NHKと視聴者側では意見が対立するが、私達はどちらが正当かを司法の場で決着しようとしているのである。

会長が辞任しない以上、仮に一審で敗訴したとしても最終的には最高裁 で判決が確定するまで、受信料の支払いを一時停止(保留)する立場である。 より根本的には、公共放送機関において受信者がどのような地位と権利を有するか、NHKの契約者はどのような場合に受信料を一時停止(保留)できるか、今後のNHKのあり方を巡って公開の法廷で明らかにすることが主眼である。

 

プリンタ用画面
カテゴリートップ
法的な見解

検索